はじめに
最近、自転車事故での高額な賠償請求事例が見られるようになりました。そのため、埼玉県では2018年4月から、県内で使用される自転車について、損害保険への加入が義務化されることになりました。
今までは個人が使用する自転車を対象に、損害保険加入が努力義務とされてきましたが、2018年4月からは個人はもちろん、事業所が業務で使用するもの、レンタサイクル事業者が貸し出すものも対象となります。また、県外から乗り入れられる自転車についても、埼玉県内においては条例の適用を受けることになります。
保険未加入の場合でも罰則はありません。ですが、実際に事故が発生した場合、賠償義務が生じることは充分に考えられ、その額も高額になる可能性があります。
ところで、個人においては「自動車保険」や「火災保険」「傷害保険」などの特約として、自転車の加害事故による賠償責任を補償するものがあります。しかし、これらは「日常生活」における賠償責任についての補償ですので、「業務」中の事故は原則対象とはなりません。
「業務」中の自転車による事故を補償するには、別途これに対応する保険に加入する必要があります。
仕事中の自転車事故では「日常生活賠償保険」などでは補償はされません。別途業務中の事故を補償する保険への加入が必要です。
企業向け自転車保険
「業務中の自転車事故」を補償するための保険は、通常下記の二つとなります。
1 TSマーク(自転車向け保険付き)
2 損害保険会社の「施設賠償責任保険」
このうち、当社では 2 の「施設賠償責任保険」を取り扱っています。
参考までに、1の「TSマーク」は自転車安全整備士が点検確認した普通自転車に貼付されるもので、このマークに賠償責任保険と傷害保険等が着いています。(付帯保険)
「TS」はTRAFFIC SAFETY (交通安全)の頭文字をとったものです。
TSマークには 緑色、赤色、青色の三種類のTSマークがあり、それぞれで賠償内容が異なります。
(1)賠償責任補償
TSマークが貼付されている自転車に搭乗中の人が第三者に死亡・傷害(緑色TSマーク)または重度後遺障害(赤色・青色TSマーク)を負わせたことにより、法律上の損害賠償責任を御ロッタ場合に下記の表の通りに適用されます。
種別 |
賠償責任補償 |
|
緑色TSマーク |
死亡・傷害 ※示談交渉サービス付き |
(限度額) 1億円 |
赤色TSマーク |
死亡・重度後遺障害(1~7級) |
(限度額) 1億円 |
青色TSマーク |
死亡・重度後遺障害(1~7級) |
(限度額)1000万円 |
※緑色TSマークは、全ての人身事故が賠償責任補償の支払対象となりました。
赤色・青色TSマークの賠償責任補償の支払対象は死亡又は重度後遺障害1級から7級でしたが、緑色TSマークは、この制限をなくし、全ての人身事故が賠償責任補償の支払対象になります(物損事故は、補償の対象になりません。)。
※緑色TSマークは、示談交渉サービスが付いています。
赤色・青色TSマークには、示談交渉サービスが付いていませんが、緑色TSマークには、示談交渉サービスが付いています。
「示談交渉サービス」とは、保険金支払いの対象となる賠償事故について、保険会社がTSマークが貼付された自転車に搭乗中の方などの代わりに示談交渉を行ってくれるサービスです。ただし、自転車の搭乗者が業務中の場合は、示談交渉サービスは提供されません(賠償責任補償の保険金は支払われます。)。
※重度後遺障害の等級は、自動車損害賠償保障法に定める等級に該当します。
(2)傷害補償
TSマークが貼付されている自転車に搭乗中の人が、交通事故によって事故の日から180日以内に入院、死亡又は重度後遺障害を負った場合は、次の表の金額が一律に支払われます。
種別 |
傷害補償 |
緑色TSマーク |
死亡もしくは重度後遺障害(1~4級)
(一律) 50万円 |
入院(15日以上)
(一律) 5万円 |
赤色TSマーク |
死亡もしくは重度後遺障害(1~4級)
(一律) 100万円 |
入院(15日以上)
(一律) 10万円 |
青色TSマーク |
死亡もしくは重度後遺障害(1~4級)
(一律) 30万円 |
入院(15日以上)
(一律) 1万円 |
※重度後遺障害の等級は、自動車損害賠償保障法に定める等級に該当します。
(3) 被害者見舞金 (※)
赤色TSマークが貼付されている自転車に搭乗中の人(加害者)が第三者(被害者)に傷害(入院加療15日以上)を負わせ、法律上の損害賠償責任を負担した場合に、次の表の金額が一律に支払われます。
種別 |
入院 (15日以上) |
赤色TSマーク |
10万円 |
※青色TSマークには、被害者見舞金制度はありません。
※緑色TSマークは、賠償責任補償により対応します。
となっています。保険期間は一年で、一年ごとに点検整備を受けて保険も更新する必要があります。また、この補償も損害保険会社で引き受けるもので、個人の日常生活だけでなく、法人の「業務」中の事故も対象となる、賠償責任と傷害保険がセットになった保険です。
これに対して当社でご提案するのは、二つの加入方法です。
一つめの「総合賠償責任保険」では、まずは企業の「業務」について保険に加入していただきます。この保険では、企業の賠償責任保険で標準で(追加保険料なしで)セットされています。
二つめの方法としては、企業の「設備・什器」や所有・使用建物等の保険に「店舗賠特約」を付帯することです。
どちらの方法がふさわしいかは、それぞれの企業が減災どんな保険にご加入かなどの条件によって異なります。詳しくはお気軽にお問い合わせください。
1 保険金額の目安について
人にケガを負わせてしまったり、不幸にして死亡させてしまった場合、過失割合に応じて、以下のような費用を賠償する義務を負うことになります。
相手が入院・通院された場合 |
治療費などの実費+休業損害+精神的損害 など |
相手が後遺障害を被られた場合 |
治療費などの実費+逸失利益+精神的損害+将来の介護料 など |
相手がお亡くなりになった場合 |
治療費などの実費+逸失利益+精神的損害+葬儀費用 など |
※逸失利益は、後遺障害を被った場合は「労働能力を喪失したことにより失った将来の収入」、お亡くなりになった場合は
「お亡くなりになったことにより失った将来の収入」となります。
年齢別の平均的な損害額(目安)ただし、下記は有職者(ただし、70才以上は除く)の平均的な損害額です。実際の損害額は収入やご家族の構成などにより異なります。
年齢 |
扶養家族の有無 |
お亡くなりになった場合 |
重度後遺障害を被られた場合 |
20 |
無 |
6,000万円 |
1億4,000万円 |
30 |
有 |
8,000万円 |
1億4,000万円 |
40 |
有 |
8,000万円 |
1億3,000万円 |
50 |
有 |
7,000万円 |
1億1,000万円 |
60 |
有 |
5,000万円 |
8,500万円 |
70 |
有 |
2,500万円 |
3,500万円 |
※上記は自動車保険パンフレット記載の「人身傷害保険 保険金額の目安」
データから引用しました。ただし、2019年の消費税増税により、必要補償額は変更されると考えられます。新しい必要保障額データは近日中にアップいたします。また賠償責任として負担する金額は上記の金額よりも高額になる可能性もあります。
ところで、見逃しがちなのですが、自転車による事故では人のケガばかりではなく、他人の財物に損害を与えてしまうリスクもあります。たとえば、自転車と自動車との事故でも自動車が100%悪いとは言えない場合があり、過失割合に応じて相手自動車の修理代等を賠償する義務が生じることがあります。この対物賠償についての保険金額は、それぞれの施設(店舗・事務所等)の業態等もふまえて設定する必要があります。